名義貸しで出来てしまった借金は債務整理できるか?

名義貸しの借金について

「必ず返すから!」と家族や友人に頼まれて消費者金融などにカードローンを申し込み、発行された自分名義のカードをそのまま人に渡して使わせている人がいます。

いわゆる「名義貸し」という行為です。

カードを使わせている相手が返済を怠ったまま音信不通になり、貸金業者から督促が来て困っている等の事情で法律相談に来ることが多いです。

「名義貸し」の借金についてお話します。

「自分は借りていない」は通用しない。あくまでカード名義人の借金です。

名義貸しは借金を免れる理由になり得ない

貸金業者は、契約者として申し込んだ人の信用に基づいてカードローンなどの取引に応じています。

したがって、そのカードを使って借りたお金は、特段の事情がない限り、カード名義人自身の借金にほかなりません。

「家族のためにカードを作ってあげただけ」とか「友人が自分で返す約束だった」などという主張は借り手の勝手な事情に過ぎず、貸金業者にとってはまったく関係のないことであり、法的にも借金を免れる理由にはなりません。

カードを人に貸すことは契約で禁止されている。詐欺罪の可能性もある。

名義貸しは契約違反

通常、カードローン契約の約款には、カード会員はカードを適切に管理する義務があるとの規定があり、他人に貸与したり使わせることはこの規定に反する行為となります。

つまり、名義貸しは、カード会社との契約違反になるのです。

「人に使わせただけで自分は借りていない」という主張が認められないことは、この点からも明らかでしょう。

名義貸しは法律違反の可能性あり

詐欺罪(刑法246条)

カード会社との契約違反というだけでなく、さらに、詐欺罪(刑法246条)という犯罪が成立する可能性があります。

すなわち、カード会社は、カード名義人の信用に基づいてキャッシング取引に応じているのであり、また契約上カード名義人以外のカード使用は禁止しています。

それゆえ、カード名義人以外の者がキャッシングを申し込んでいると知っていたならば、カード会社は貸付を拒否したはずです。

したがって、名義貸しであることを隠してカードキャッシングを行うことは、カード会社を欺く行為になり、詐欺罪が成立する可能性があります。

無人のATMを使用するカードキャッシング取引の場合は、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が成立し、カード名義人と実際に使用した者の共犯となると考えられます。

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

使わせた人に払わせることは難しい。

名義貸しで負った借金を取り戻すことも困難。

名義貸しでカードを他人に使わせた人は、「法的には自分の借金かもしれないが、約束したんだから、カードを使った本人に払わせたい」と思うでしょう。また、「いったん自分でカード会社に返済するとしても、あとでカードを使った本人からその分を取り返したい」とお考えになるかもしれません。

結論から言うと、どちらもきわめて難しいというほかありません。

前述のとおり、そもそも人に使わせるつもりでローンカードを発行させたり、自分名義のローンカードを人に使わせる行為は、ローン会社との契約に反するだけでなく、詐欺罪にあたる可能性のある重大な違法行為です。

それゆえ、「カードを使わせてあげる代わりに借りた分は自分で払う」という相手との約束は公序良俗に反して無効(民法90条)となる可能性があります。

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

また、カード名義人の返済によってカードを借りた本人が結果的に得をしたとしても、民法の「不法原因給付」(民法708条)に該当し、その分の取り戻しはできない可能性もあります。

(不法原因給付)

第七百八条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

したがって、「約束どおり自分で払え」とか「代わりに払った分を返せ」という要求を法的に実現することは難しいといわざるをえません。

さらに言えば、「名義貸し」を頼んでくる相手は、そもそも自分でカード会社の審査に通る見込みがないほど資力に乏しい人であると考えられます。

いくら固く誓ったとしても、実際にお金がない人からはとれませんから、この点でも上記のご要望にお応えするのは難しいと思われます。

頼まれても断ることが第一。払いきれないなら債務整理による解決を。

これまで説明したとおり、他人にカードを使わせたとしても、その借金はカード名義人自身の借金にほかなりません。

カードを使わせた相手に返済させることや、返済した分をあとから取り返すことも法的にはまず実現できないと考えるべきでしょう。

さらに、自分が詐欺罪に問われる可能性すらあるのですから、名義貸しに応じて何も良いことはありません。

どんなに親しい人に頼まれても断るべきですし、もしすでに使わせてしまっているならば早急にカードを取り返して名義貸しを解消するべきです。

すでに名義貸しをしてしまっていて、カード会社から請求を受けている人は、自分の資産や収入で完済するめどが立たないならば、弁護士に相談して債務整理による解決をはかることができます。

たとえ名義貸しで負った債務であっても、まず自分自身の借金であることを受け止め、自分の責任で解決しようという意思があるならば、弁護士はお力になることができます。お気軽にご相談ください。

債務整理は事務所選びが一番大切!