借金返済の滞納と代位弁済
代位弁済とは
カードの返済を滞納したところ、自宅に「代位弁済通知書」や「保証実行通知書」などというタイトルの書面が届いたという理由でご相談に来られる方がいらっしゃいます。
「代位弁済」という言葉に馴染みがなく、また差出人の名前が聞き覚えのない金融機関であったりするため、驚かれるようです。
カードローンにおける「保証」や「代位弁済」とは何か、ご説明します。
保証と代位弁済
人にお金を貸すときに、借りる人(主債務者といいます)が返せなくなった場合に備えて、別の人を保証人にすることがあります。この時、お金を貸した人(債権者)と保証人との間には、保証契約(民法446条)という契約が成立しています。
保証人は、保証契約に基づく自分自身の義務として、借りたお金の元本はもちろん、その利息、遅延損害金等を債権者に対して支払う義務を負います。
保証人が、主債務者に代わってこれらの支払義務を履行することを、「代位弁済」といいます。
たまに「保証実行」という言葉を使う金融業者がいますが、「代位弁済」と同じ意味です。
主債務者に頼まれて保証契約を結んだ保証人が代位弁済をした場合、保証人は主債務者に対してその金額を支払うように請求することができます。
この保証人の主債務者に対する権利を「求償権」といいます(民法459条)。
保証会社と求償権
消費者金融や信販会社が、事業として、他社のローンの保証人になることがあります。
これらの会社を、実務上「保証会社」と呼んでいます。
見落としがちですが、カードローンの申込書類には、保証会社との保証委託の申込書も含まれていることが通常です。
たとえば、三菱UFJ銀行のカードローンは、グループ会社のアコム株式会社を保証会社としています。
そのため、三菱UFJ銀行のカードローンの返済を滞納すると、保証会社であるアコム株式会社はカード顧客に代わって未払いの貸付金残高や利息、遅延損害金を「代位弁済」します。
その結果、保証会社であるアコム株式会社は、カード顧客に対して「求償権」を取得することになるのです。
「代位弁済通知書」や「保証実行通知書」などの書面は、保証会社が「代位弁済」を行い求償権を取得したことを主債務者に伝えるためのものです。
債務がなくなったわけではない。放置せずに弁護士に相談を。
主債務者にとっては、代位弁済によって債権者が保証会社に入れ替わったのと同じことであり、支払いを免れたわけではありません。
保証会社に対する支払(求償債務)をしない限り、通常は郵便などの方法で催促し、それでも支払がなければ裁判等の法的手続きに移行するでしょう。
また、仮に催促が来ないとしても、債務が残っているかぎり遅延損害金は発生し続けます。
「代位弁済通知書」や「保証実行通知書」を長期間放置すると、借金の総額が書面に書かれていた金額よりも大幅に増え、解決の選択肢が少なくなるおそれがあります。
保証会社から通知が来たら、決して放置せず、弁護士に解決方法を相談しましょう。
代位弁済された人の信用情報について
保証会社によって代位弁済された人は、すでに滞納によって期限の利益を喪失しているため、債権者が加盟する指定信用情報機関によって延滞の事実が信用情報に登録されていると考えられます。
したがって、その時点で他のカード会社も含めて新たにキャッシングをしたりクレジットカードを利用することは難しくなっているでしょう。
なるべく早いうちに債務整理に着手し、返済の負担を軽くするとともに家計収支の見直しを行い、滞納の原因を解消することに努めるべきです。
任意整理の交渉は保証会社によって異なる。
実績豊富な法律事務所に相談を。
借金の金額がそれほど多くなく、継続的な収入が見込める人であれば、任意整理によって解決を図ることも考えられます。
保証会社が代位弁済した場合、任意整理の交渉相手は求償権を有する保証会社となりますが、示談に応じる基準や条件は、各社様々です。
任意整理に協力的で事情によっては5年を超える長期分割にも応じてくれる会社がある一方で、残念なことに弁護士会のガイドラインを尊重せず遅延損害金の免除等に応じない会社も一部存在します。
あらかじめ金融会社ごとの特徴を把握していれば、交渉に無駄な時間を浪費することなく適切に債務整理の方針を選択することができます。