自己破産をすると、東電から受け取った原発賠償金はどうなるのか?
平成23年3月11日に発生した東日本大震災によって、東電の福島第一原発及び福島第二原発に被害が発生、福島第一原発では1号機及び3号機が水素爆発し、放射性物質が飛散するという未曽有の大災害が起こりました。
そして、放射性の大量放出を受け、多くの人々が避難をすることとなり、 現在(令和2年2月10日現在)でも、約4万8000人の方が避難生活を続けています。
避難をした方に発生した損害については、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」といいます)が損害賠償を開始しており、すでに相当金額を受けている方も多くいます。
東電から原発賠償金を受け取っていた場合、自己破産をするとどう扱われるのでしょうか?ご説明致します。
原発賠償金と自己破産
原発賠償金とは
原子力損害賠償請求権は、原子力事故という不法行為に起因する損害賠償請求権で、原子力損害の賠償に関する法律3条1項により、無過失責任であるとされます。
原子力損害賠償紛争審査会が、原子力損害の範囲等に関し中間指針および追補を出しており、東電は、当該中間指針及び追補に従って、損害賠償金を支払っています。
東電がこれまで支払ってきた損害賠償金は、項目ごとに見ていくと、
- 避難費用
- 一時帰宅費用
- 治療費
- 精神的損害
- 財物
- 住居確保損害
- 営業損害
- 検査費用
などとなっています。
原発賠償金を受け取った後、自己破産をするとどうなるか?
原発賠償金を受け取った債務者が破産申立てをした場合の、原発賠償金の取り扱い
原発賠償金を受け取った債務者が破産申立てをすると、原発賠償金はどのように扱われるのでしょうか。
原発賠償金が口座に残っている状態で、破産手続開始決定がでると、原則、当該預金については破産財団となり債権者へ配当されることになります。
ただし、預金が同時廃止基準未満(たとえば20万円未満)の場合には開始と同時に破産手続が終了したり(同時廃止)、同時廃止でなくとも預金が自由財産の基準内(たとえば20万円未満)であれば、預金を債務者の手元に残せる可能性があります。
債務者が原発事故の被害者であり、預金が原発損害賠償金である場合に、当該預金が避難生活に費消される見込みであるときは資産性が認められないとして、99万円未満であれば同時廃止とすべきであるとの見解もあるようです。
同時廃止とならなかった場合でも、当該預金が債務者の生活に必要不可欠な資金であるとして、換価の対象とならない自由財産の範囲を拡張することができれば、ある程度の資金を債務者の手元に残せる可能性があります。
破産手続が開始された後に取得した原発賠償金の取り扱い
破産手続開始決定後に受け取る原発賠償金はどのように扱われるのでしょうか。
原発賠償金の原因は、破産手続開始決定前であるため、受け取っていない原発賠償金についても将来債権として破産財団を構成し、換価され配当へ回されることが原則と考えられます。
ただし、原発賠償金のうち慰謝料請求権については、行使上の一身専属性があるため、破産財団とならないと考えられます。
将来の避難費用や休業損害についても日々発生する権利として破産財団とならないと考えられています。
これら以外の原発賠償金についても、生活に必要不可決な資金として、自由財産の範囲が拡張されれば、ある程度の資金を債務者の手元に残せる可能性があります。
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原発賠償金については、避難生活等に必要不可欠な資金としてある程度の資金を手元に残せる場合もあります。お気軽にご相談ください。