債務整理をすると、年金担保貸付はどうなるか?
ご高齢の方や、障がいをお持ちの方の中には、通常の貸金業者からは融資が受けられずに、年金を担保に貸付を受けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
少ない年金から返済金を天引きされて生活にお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
「年金担保貸付を受けている場合に、債務整理するとどうなるか」ご説明致します。
年金担保貸付は、債務整理するとどうなる?
年金担保貸付とは
年金担保貸付とは、年金の支払を受けている方に対し、年金を担保に、医療費や介護費、リフォーム費用、債務の一括整理などの目的で、金銭を貸し付けることをいいます。
年金担保貸付事業は、独立行政法人福祉医療機構(WAM)のみが行っています。
年金は年金受給者の生活を支える重要な収入源となりますので、年金を担保として資金を貸し付けることは法律で禁止されています。WAM以外の事業者は年金担保貸付をすることができません。
借入の返済は、年金の全額をWAMが受け取り、定額返済額を引いてから、WAMが利用者に残額を送金することになります。
なお、新規の年金担保貸付の申込は、令和4年3月末で終了することになっています。
年金担保貸付と自己破産
年金担保貸付の負担は、自己破産をしてもなくならない
通常の債務の場合、自己破産の申立てをし、裁判所から免責の許可を受けて当該許可が確定すると、 原則、 破産手続開始時点の債務について支払う必要がなくなります。
ただし、年金担保貸付については、免責許可が確定しても、免責されません。
年金が担保となっているため、WAMは、破産手続外で、従前どおり破産者の代わりに年金を受け取り、定額返済額を引いた残額を破産者に送金することが可能です。
年金担保貸付と個人再生
年金担保貸付は、個人再生後も負担の内容は同じ
通常の債務の場合、 個人再生においては、ある一定の弁済率(おおむね20%)に減じる再生計画案が認可され確定すると、債務の内容が変更され、債務者は、弁済率を乗じた債務を再生計画に従い返済すればよいことになります。
年金担保貸付については、年金が担保となっており、かつ担保不足額がないため、債務の内容が変更されません。
WAMは、個人再生手続外で、従前どおり債務者の代わりに年金を受け取り、定額返済額を引いた残額を債務者に送金することが可能です。
年金担保貸付と任意整理
年金担保貸付は、任意整理の対象とすることが出来ません
任意整理は、破産や個人再生と異なり、整理する対象の債務(借金)を選択することができますが、年金担保貸付を任意整理の対象とすることは出来ません。
つまり、天引きを止めることはできません。
年金担保貸付を受ける前に債務整理を考えよう
以上のとおり、年金担保貸付を受けている場合、法的な債務整理をしても、年金担保貸付の負担自体を減らすことができません。
特に債務の一括整理を目的として年金担保貸付を受けてしまった方については、年金担保貸付を受ける前に、破産や個人再生をしていれば、破産免責や個人再生の債務変更の利益を受けられた可能性が高いと考えられます。
債務の一括整理を目的として年金担保貸付を受けようとする方は、その前に一度、弁護士に相談して、債務整理を検討することをお勧めします。
既に年金担保貸付を受けている方で、債務整理をご検討中の方へ
年金担保貸付を受けている場合に、任意整理がよいのか、それとも破産や個人再生などがよいのかは専門家に相談してみないとなかなか分かるものではありません。 法律事務所にご相談ください。