個人再生をすると、東電から受け取った原発賠償金はどうなるのか?

平成23年3月11日に発生した東日本大震災によって、東電の福島第一原発及び福島第二原発に被害が発生、福島第一原発では1号機及び3号機が水素爆発し、放射性物質が飛散するという未曽有の大災害が起こりました。

そして、放射性の大量放出を受け、多くの人々が避難をすることとなり、 令和2年になった現在でも、約4万8000人の方が避難生活を続けています。

避難をした方に発生した損害については、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」といいます)が損害賠償を開始しており、すでに相当金額を受けている方も多くいます。

東電から原発賠償金を受け取っていた場合、個人再生をするとどう扱われるのでしょうか?ご説明致します。

原発賠償金と個人再生

原発賠償金とは

原子力損害賠償請求権は、原子力事故という不法行為に起因する損害賠償請求権で、原子力損害の賠償に関する法律3条1項により、無過失責任であるとされます。

原子力損害賠償紛争審査会が、原子力損害の範囲等に関し中間指針および追補を出しており、東電は、当該中間指針及び追補に従って、損害賠償金を支払っています。

東電がこれまで支払ってきた損害賠償金は、項目ごとに見ていくと、

  • 避難費用
  • 一時帰宅費用
  • 治療費
  • 精神的損害
  • 財物
  • 住居確保損害
  • 営業損害
  • 検査費用

などとなっています。

原発賠償金を受け取った後、個人再生をするとどうなるか?

原発賠償金を受け取った債務者が個人再生申立てをした場合の、原発賠償金の取り扱い

個人再生は、裁判所を通じた手続で、ある一定の弁済率(概ね20%)とする再生計画が認可確定されると、債務の内容が変更され、債務者は、再生計画に従い、当該弁済率を乗じた債務を3年~5年で返済すればよいことになります。

上記弁済率は、債務の総額を基準に決められますが、「破産をした場合の配当率を下回ってはならない」という清算価値保障原則があります。

個人再生手続開始前に受け取った原発賠償金が残っている場合には、ケースによっては清算価値が大きくなるため、結果として返済する金額が多くなる可能性があります。

場合によっては、履行可能性がないとして、再生計画が認可されない可能性もあります。

個人再生手続が開始された後に受け取った原発賠償金の取り扱い

個人再生手続開始決定後に受け取る原発賠償金はどのように扱われるのでしょうか。

原発賠償金のうち慰謝料請求権については、行使上の一身専属性があるため、破産しても破産財団とはならないため、清算価値への上乗せは必要ありません。

将来の避難費用や休業損害についても日々発生する権利として破産財団とならないと考えられているため、清算価値への上乗せは必要ないと考えられます。

上記以外の原発賠償金については、原則、清算価値への上乗せが必要となりますので、再生計画による返済が大きくなってしまう可能性があります。

なお、清算価値の判定の基準時は、再生計画認可時とされていますので、再生計画認可前に原発賠償金を受け取った場合には、上記で清算価値への上乗せが必要でないとした部分についても、清算価値に上乗せする必要があります。

お気軽にご相談ください

原発賠償金の受け取りがあると、破産を選択するのか、個人再生を選択するのか、それとも任意整理をするのか迷われる場合も多いのではないでしょうか。 法律事務所にお気軽にご相談ください。

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