親は、子どもの借金の返済義務を負うか
息子が借金を抱えていることを知りました。
親は、子どもの借金について肩代わりしなければなりませんか?
ある日突然、子どもあてに金融機関からの督促状が届いたとしたら。
子どもが借金していることを知って心配になるでしょう。
はたまた、子どもが借金していることが恥ずかしいと思い、世間にばれないか不安になる方もいるかもしれません。
どちらにせよ、自分の子どもの借金を肩代わりして払おうとする方が一定数いますが、まずは一旦落ち着きましょう。
子どもの借金について親は責任を負うか?
子どもと言っても、未成年の子どもと成人した子どもでは法律上の取り扱いが違います。
(1)未成年の場合
そもそも、未成年の子どもの場合、一部の例外的な場合をのぞき、親の同意なくして借金をすることは通常できません。
そうはいっても、未成年の子どもが勝手に高価な買い物をしたり、借金をしてしまったりすることもあるでしょう。
親の同意なく借金をした場合、親は子どもの行為を取り消すことができます。
取消しをする場合、子どもがもらった現存利益だけを返せばいいとされています。
具体的には、買い物であれば物を返す、借金であれば浪費してしまった部分を除いて子供の手もとにあるお金を返すこととなります。
【例外】親の同意がない未成年者の行為でも、一部の場合には親が取り消すことができません。
- 子どもが既婚者である場合
- 親の許可を受けて仕事をしている場合
- 相手をだまして成人であると思わせた場合
これらのケースの場合は、子どもの借金について、成人の場合と同じように債務整理を検討する必要があるかもしれません。
(2)成人の場合
成人した子どもの場合、法律上、親とは独立した存在として扱われます。
そのため、子どもの借金について、親が「保証人」「連帯保証人」「連帯債務者」のいずれかになっていない限り、親は法律上の責任を負いません。
したがって、親が子どもの借金を払わなければいけない法的な理由はありません。
さらに、金融業者が、保証人・連帯保証人・連帯債務者でない親に対して、子どもの借金を請求することは禁止されています。そして、そのような請求に対して、貸金業法や銀行法で懲役や罰金という罰則を定めています。
そのため、「親が払え」と言われたとしても一切応じる必要はございません。
そうはいっても、子どもが借金で苦しんでいる姿を見て放っておけない方もいるでしょう。 親が肩代わりすることなく子どもの借金問題を解決する方法もありますのでご検討ください。「債務整理」です。
債務整理とは
債務整理とは一口に言っても、大まかに3つ方法があり、その人次第で最良の方法が異なります。
(1)自己破産
簡単に言えば、自己破産は、子どもの資産を清算し、借金を支払う義務をなくしてもらう手続です。つまり、借金を0にすることができる手続です。
ただ、この手続はデメリットがあります。
まず、破産をすると、ブラックリストに載ってしまい5年間から10年間は新たにローンを組んだり、クレジットカードを作ることができなくなったりしてしまいます。
また、破産によって、保険や警備などの一定の職業にしばらく就くことができなくなります。
さらには、破産したことが氏名と住所と一緒に官報に載ってしまうので、公務員の方にとっては選びにくい手法です。
自己破産にはデメリットもありますが、デメリットが当てはまらない方も少なくありません。重要なのは、子どもが自己破産した場合のメリット、デメリットを正しく把握することです。
(2)個人再生(民事再生)
民事再生手続を選択すると、借金を最大で10分の1まで減らし、3年かけて月々返済をしていくことができます。
民事再生手続の中の個人再生手続を使えば、ローンを払い続けているマイホームについては手放さなくてよくなる可能性もあります。
もっとも、個人再生手続は債権者が反対するとできません。借金している相手が絶対に賛成しないような可能性がある場合にはこの民事再生手続は選択肢から除外する必要があります。
(3)任意整理
任意整理手続は、裁判所を通さないで借金相手と交渉することで、利息部分を除いた残金を数年単位の分割で支払うように変えてもらう手続です。
子どもに一定の収入があり、利息分さえなければ分割で払うことが可能な場合にはこの手続を選ぶことができます。
この手続の最大のメリットは交渉する相手を選べることです。
たとえば、所有権留保条項がある契約で車を購入した際のローンについて、代理人が入ってしまうとその時点で車が持っていかれてしまう可能性があります。
その場合には、車のローン以外の借金について弁護士が間に入って交渉して、借金を整理します。
但し、この手続は、子どもの収入と支出を見て、支払いの目途が全く立たない場合には選ぶことができないので注意が必要です。
借金問題で困ったら、法律事務所へ
このように、親御さんが肩代わりをしなくても子供の借金を減らす方法はあるのです。
しかし、どの手続が一番いいのかをいざ考えると、よく分からなくなることもあるかと存じます。
その時は、ぜひ法律事務所までお気軽にご相談ください。