個人再生(民事再生)をお考えの方へ
個人再生とは
個人再生とは、民事再生法に基づく個人債務者のための民事再生手続であり、カードローンなどの借金の返済ができなくなった人について、返済総額を少なくした再生計画を立て、認可された再生計画にしたがって原則3年間で分割して返済し残りの債務が免除される手続です。
個人再生を利用できるのはどのようなときか
(借金全部を免責する自己破産とは異なり、)個人再生は、負債の一部を弁済する手続きです。そのため、第一に、継続的な収入があることが条件です。
また、住宅ローンを除く負債の総額が5000万円以下でなければなりません。
自己破産との違い
個人再生は、自己破産と同じく、すべての負債を対象として裁判所を通じて行う倒産手続の一つです。
しかし、自己破産と異なり、債務の一部は再生計画に基づいて弁済します。
したがって、継続的な収入がある方が対象となります。
(アルバイトや個人事業主であっても構いません)
また、自己破産は、債務者の有する財産を原則として処分しなければなりません。
(自己所有の家に住んでいる人は家を失うことになります)
一方、個人再生では、財産を処分する必要はなく、手許に残すことができます。
特に、いわゆる住宅ローンが残っている住宅については、住宅資金特別条項を定めた再生計画が認可されれば、それに基づく弁済をすることによって、住宅ローンはそのまま(又はリスケジュールするなどして)支払を続け、持ち家を残しながらほかの債務を整理することができます。
そのほか、自己破産と異なり免責不許可事由がないので、ギャンブルや投資、浪費が原因の借金でも免責についての心配がありません。
警備員、生命保険募集人などの資格制限もありません。
小規模個人再生と給与所得者等再生
個人再生には、小規模個人再生(民事再生法221条~238条)と、それを簡略化した給与所得者等再生(同239条~245条)があります。
(1)小規模個人再生
小規模個人再生は、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、住宅ローンなどの担保が付いていない負債や再生手続前の罰金等の総額が5000万円を超えない場合に利用できる手続です。
自営業者やアルバイトの方であっても、働き続けることで反復継続して収入を得る見込みがあるならば利用できます。
これらの条件をみたす人は、下の①最低弁済額と、②仮に自己破産した場合に債権者への配当資金になるはずだった金額の、いずれか多い方の金額を総返済額として再生計画を立てることになります。
最低弁済額
債務総額が100万円未満の場合 | 全額 |
債務総額が100万円以上500万円未満の場合 | 100万円以上 |
債務総額が500万円以上1500万円以下の場合 | 債務総額の5分の1以上 |
債務総額が1500万円を超え3000万円以下の場合 | 300万円以上 |
債務総額が3000万円を超え5000万円以下の場合 | 債務総額の10分の1以上 |
そのほか、「再生計画案に同意しない」という回答が債権者の頭数の半数未満かつ債権総額の2分の1以下であることが必要です。
(2)給与所得者等再生
給与所得者等再生は、前記(1)小規模個人再生の債務者のうち、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれる」場合に利用できる手続です。
いわゆるサラリーマンなど、将来の収入の見込みが特にはっきりしている人を対象とし、可処分所得の2年分以上の額を返済することを条件として、再生計画の成立における債権者の決議を省略し、小規模個人再生の手続を簡略化したものです。
最低返済額について、(1)の最低弁済額と清算価値保障原則に加え、可処分所得の2年分以上という要件が加わるため、通常は小規模個人再生よりも返済額が多くなります。
個人再生の申立ては弁護士に相談しましょう
個人再生は、特に住宅ローンが残っている持ち家に住んでいる人にとっては、利用できれば大変メリットのある手続です。
しかし、法律の要件が複雑であり、実際にいくらの返済が必要となるかは、慎重に調査して判断する必要があります。たとえば、持ち家に多額の含み益が生じていたり、高額の退職金が見込まれる場合は、返済額が思ったよりも圧縮できず、再生計画が成り立たないというケースもありえます。したがって、「持ち家を残しながら借金を整理できる」という一般論だけで債務整理の方針を決めることは危険です。
また、仮に個人再生ができる場合であっても、再生計画案などの複雑な書類を裁判所が指定した期間内(「標準スケジュール」といいます)に提出できなければ手続が無駄になることもあります。
個人再生を希望する方は、仕事をお持ちの方が多いかと思います。特に知識のない方が、仕事や日常生活の合間にこれらの作業をこなすことは困難を極めるでしょう。 個人再生をお考えの方は、まず弁護士にご相談ください。