クレジットカードで航空券や新幹線のチケットなど金券を購入した後に現金化した場合も債務整理できるのか?

クレジットカードで航空券や新幹線のチケットを購入した後に債務整理をする場合、この購入済みのチケットはどのように扱われるのでしょうか。使っても大丈夫ですか?

また、チケットを転売してしまった場合はどのように扱われるのでしょうか?

チケットを購入したクレジットカードを債務整理した場合、当該チケットを使っても大丈夫なのか心配される方もいらっしゃると思います。実際にどうなるのか、解説します。

クレジットカードで購入したチケットはどうなる? 

クレジットカード契約とは

クレジット契約には、あらかじめ利用限度額を設定してカードを発行し販売業者にカードを提示して商品を購入する方式(包括式)と、商品購入のつどクレジット申込書を作成し支払能力の調査確認により審査し契約を締結する方式(個別式)があります。

クレジットカードが発行されるような契約は、上記の包括式のクレジット契約ということができます。

クレジットカードの利用者は、クレジットカード加盟店で商品を購入する際にクレジットカードを提示することによって、その場で代金を支払うことなく商品を購入することができます。

クレジットカード会社(信販会社)は、クレジットカード利用者との間のクレジット契約に基づき、クレジットカード利用者と加盟店との販売契約に基づく売買代金をクレジットカード利用者の代わりに支払います。

そして、クレジットカード利用者は、クレジットカード会社が立替払いした売買代金を支払う義務(債務)を負うことになります。

クレジットカードを利用される方の中には、1回払いの場合には債務を負担していないと勘違いされる方もいますが、実際には、クレジットカード会社に対する債務を負担していることになります。

クレジットカードで購入した商品は、任意整理するとどうなる?

クレジットカードを利用して商品を購入した場合、クレジットカード利用者が当該債務を返済するまでの間、当該商品の所有権はクレジットカード会社にあります。クレジットカード会社の会員規約にはこのような特約が付されています(なお、割賦販売法7条にも所有権がクレジット会社にあることを推定する規定が設けられています(なお、政令で指定された商品のみ)。)。

これを「所有権留保特約」といいます。

クレジットカード会社としては、クレジットカード利用者が代金債務を返してくれない場合、クレジットカード利用者が購入した商品をクレジットカード利用者から引き揚げることができます。

クレジット会社の債務を任意整理した場合、クレジットカードを利用して購入した商品のうち購入代金を返済してないものについては、クレジット会社に引き揚げられる可能性があります。

なお、リボルビング払い(いわゆるリボ払い)については、弁済金と購入した商品の代金債務との対応関係が一見して明らかでないため、規約上も、所有権留保特約の対象とはならないと考えられます。

購入した商品が航空券や新幹線のチケットの場合はどうか?

航空券のような、利用者の氏名が記載されたものの場合

航空券については、利用者と航空会社との間で、特定の航空機を利用する旨の契約(旅客運送契約)を締結すると、利用者の氏名が記載された航空券が発券されます。また、航空券は航空会社の約款で譲渡が禁止されているため、利用者のみが航空券を利用することができます。

以上からすれば、航空券は、利用者と航空会社との間の旅客運送契約が成立したことの証拠にすぎず、それ自体に物としての価値があるわけではありません。

クレジット会社は、利用者の航空会社に対する債権について所有権を取得できないため、仮に任意整理をしたとしても、当該航空券が引き揚げの対象になることはないと考えられます。

新幹線の切符のように記名式でないものの場合

無記名乗車券については、有価証券であるとの見解もあるところですが、このような見解に従ったとしても、所有権の対象とはならないため、仮に任意整理をしたとしても、当該切符が引き揚げの対象になることはないと考えられます。

したがって、仮に任意整理したとしても、利用者は、航空券や新幹線のチケットをそのまま利用することができると考えられます。

航空券や新幹線のチケットを転売した場合はどうか?

任意整理の場合、航空券や新幹線のチケットの転売があったとしても、当該チケットにはクレジット会社の所有権が留保されていないため、問題になることはないと考えられます(なお、航空券については譲渡が禁止されているため、質屋等の業者は買取をしないと考えられます)。

ただし、破産の場合には、以下の問題が発生すると考えられます。

(1)免責不許可事由にあたり、免責が不許可となる可能性がある

多重債務者の中には、クレジットカードで購入した商品を換金して資金を捻出するなどの行為がみられます。

破産法では、破産手続開始を遅延させる目的で、破産者が、信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分することを免責不許可事由としています(破産法252条1項2号)。

クレジットカードで購入した新幹線のチケットを転売した場合には、免責不許可となる可能性がありますので、注意が必要です。

ただ、こういった情報を知らずに転売を行ったとしても、裁判所から裁量免責を受けられる可能性は十分にありますので、依頼した弁護士によく相談してみてください。

(2)他の債権者を害する行為として、否認の対象となる可能性がある

相当の対価を得て処分をした場合でも、他の債権者を害する行為として、否認の対象となる可能性があります。

ただし、質屋等の業者にチケットを売却した場合は、業者が破産者に対してした反対給付が財団債権となること、当該チケットの価格と業者の買取金額の差がそれほど大きくないこと、業者が破産者の財産隠匿の意思を知っていたといえるケースが多くないと考えられることから、否認権が行使されることは稀ではないかと考えられます。

なお、裁判所が選任した破産管財人が否認権を行使すると、チケット業者から、チケットまたは価額を返還してもらい、チケットを処分した価額または返還を受けた価額を各債権者の配当へ回すことになります。

破産管財人はチケットの価額からチケット業者が破産者に支払った金額(買取金額)を控除した金額を請求することもできます。

お気軽に弁護士にご相談ください

以上、クレジットカードで購入した航空券や新幹線のチケットについての取扱いを説明しました。

クレジットカードで購入したチケットを転売した場合には、自己破産において免責不許可となる可能性があり、債務整理を依頼する弁護士によく相談する必要があります。法律事務所にお気軽にご相談ください。

債務整理は事務所選びが一番大切!