「自己破産は怖い?」自己破産のよくある噂話は本当なのか?
自己破産とは
債務整理の手段として「自己破産」というものがあることは多くの方がご存じだと思います。
しかし、自己破産という名前はよく知られているものの、正確に「自己破産が何なのか」を知らない人が多いため、誤解から、「怖い」というイメージがつきがちです。
相談者と弁護士の会話をもとに「自己破産」について分かりやすくご紹介いたします。
5社以上から500万円を超える借金はあって返済が苦しい状況です。
自己破産について教えて?
自己破産とは、裁判所に申立てをして免責が認められれば、借金返済の法的責任がなくなるという制度です。
「法的責任がなくなる」とは?
法的責任がなくなるというのは、簡単に言うと、「裁判を起こしても裁判所は判断を下せず、財産の差押えなどの強制執行もできなくなる」ということです。
そうは言っても、日常生活への影響は大きいのでは?
会社だって、自己破産すると解雇されるんでしょ?
確かに「自己破産をすると、会社から解雇をされる」との噂話を耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
私もそう聞きました!
しかし、会社は、自己破産を理由に従業員を解雇することはできません。
自己破産が当然に解雇理由となるわけではないからです(ただし、特定の業種に関しては、破産手続の間、仕事に就けないことがあります)。
へぇぇぇー!
就業規則を見てみましょう。解雇できる場合がいくつか書かれていると思いますが、「自己破産した場合に解雇できる」とは書かれていないと思います。
(ただし、宅地建物取引士(宅建士)など特定の職業に関しては、破産手続の間、仕事に就けないことが法律上定められています)。
かりに、解雇された場合は「不当解雇」に該当するとして、会社に対して解雇の無効や損害賠償の請求を行うことができます。
それでも公になってしまうんでしょ?
働きづらくなってしまうじゃないですか。
たしかに、自己破産をすると、官報に住所と名前が掲載されます。官報とは、政府の広報誌のようなものです。
官報は一般的に多くの人が見るものではないといえます。公務員や銀行の融資担当者などは仕事柄よく見ている人もいますが、そうでない限りなかなか見ている人は少ないと思います。販売店も限られています。
なるほど
もちろん、破産を申立てる時点で会社に知られることはあり得ます。
それはどうして?
「官報を見ている人は少ない」とたった今仰ったばかりじゃありませんか
自己破産する場合、退職金も財産とみなされますので、退職金支給見込額証明書ないし退職金がないことの証明書を裁判所に提出しなければなりません。この証明書を日常使う機会はあまりないので、退職金支給見込額証明書ないし退職金がないことの証明書を勤務先で書いてもらう場合に会社に知られることはあるかもしれません。
ただ、繰り返しになりますが、もし仮に会社に自己破産の事実を知られたとしても、会社側は自己破産自体を理由として解雇を言い渡すことは通常はできません。
それでも解雇された場合は「不当解雇」に該当するとして、会社に対して解雇の無効や損害賠償の請求を行うことが可能となります。
うーーん・・・
会社はクビにならなくても、親や妻、兄弟、子どもに取り立てがいって迷惑がかかるんでしょ?
自己破産して免責となった場合、自己破産した人の借金返済義務がなくなるだけで、親や配偶者など周囲の人に請求することは法律上認められませんので、周囲の人に請求が行くことはありません。
ただし、周りの方が保証人になっている場合には、保証契約に基づいて請求がされてしまうことになります。
そっか、親や家族に請求がいくというのも保証人でなければないんだね。
あと、いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれるものに載るというのはどうなの?
いわゆる「ブラックリストに載る」というのは、信用情報機関に「債務整理」などの情報が登録されることをいいます。
自己破産をすると、信用情報機関の職員が官報をチェックして、「自己破産」の情報を登録します。そのため、免責を受けてから約5年~10年程度はクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりできなくなります。
もっとも、ローンに関しては自動車販売店の自社ローンなどは利用できることがあります。また、ブラックリストに載るといっても、永久に載るわけではありませんので、一定年数が経てばクレジットカードを作ったりローンを組んだりすることができる場合が多いです。あくまで、クレジットカードが作れるかやローンを組んだりできるかは、カード会社や信販会社の審査の結果によるということになりますが。しかし、自己破産をしたことが会社に知られるかというと、自己破産の申立て後に裁判所から会社に通知が来ることはありませんので、当然に会社に知られるわけではありません。
債務整理、検討してみようかな。
「自己破産すると生活できなくなるのでは?」 の誤解
自己破産は生活再建・再出発のための制度です
自己破産は債務が免責されることによって新たなスタートを切るための制度です
生活ができなくなるということにはなりません。自己破産によって失うのは「生活に必要な最小限のもの以外」ですので、生活に必要な分の家財道具や現金を失うことはありません。
もちろん、破産後に浪費を重ねればこの限りではございませんが、むしろ、多重債務で生活ができない状態から脱却して生活を立て直すために自己破産を行うわけですから、「自己破産に起因して最低限の生活ができなくなる」ということはないのです。
「周囲に対する悪影響が大きいのでは?」の誤解
「親・兄弟・子ども・配偶者に取り立てがいく」?
周囲に悪影響を及ぼす自己破産による「周囲に対する悪影響」を懸念される方もいらっしゃると思います。主に噂されているのが「選挙権が剥奪される」、「親・兄弟・子ども・配偶者に取り立てがいく」などですが、これらは全て事実無根の話です(ただし、保証人がいればその方に請求がいくことになります)。親兄弟に取立てに行くことは、法律的には違法なことですし、選挙権もなくなりません。
「就職に不利になる」「結婚に響く」 ?
借金やローンの返済が苦しく、「家族の就職、結婚に響く」ということも言われますが、家族の就職や結婚といったときに、(破産状態であることが就職先や結婚相手に分かるかはともかくとして)破産状態なのに自己破産の手続をとらないでいる場合と、自己破産・免責の手続を経て破産状態でなくなった場合と、どちらが就職や結婚に事実上のマイナス要因になるかは、考えていただければ分かると思います。
「ブラックリスト(事故情報)に掲載される」 ?
なお、「ブラックリスト(事故情報)に掲載される」との噂を耳にすると思いますが、これはあながち間違いではありません。 自己破産すると、概ね5年~10年程度は、信用情報機関に登録されるため、ローンなどの借金ができなくなります。
とはいえ永久に登録されるわけではありませんので、一定の年数が経てば家や車のローンも組むことができます。
自己破産を検討されてなさっている方は、他の債務整理の方法(個人再生・任意整理)も含めて「債務整理手続きがご自身に合うか」まずは専門家である弁護士にご相談されることをお勧めしますへご相談ください。
初めて弁護士事務所を訪れる方も安心してご相談いただけます。相談者様の方の現状をしっかりと把握した上で、最も適切な一人ひとりに合った解決法をご提案いたします。