「借金が返せない!でも妻や子が生活に困らないようにお金は残したい」債務整理できるか?

妻や子が生活に困らないように手元にお金は残したい

借金でお金が返せない状況になっても、妻や子が生活に困らないよう財産を分けておきたいというのは人間の通常の心理です。

債務整理を視野に入れる状況において、妻や子の生活資金を確保することは可能か、順を追ってご説明致します。

ケース紹介

Aさんは、貸金業者2社に対し各50万円の債務、信販会社2社に対し各100万円のクレジット債務を負っており、債務総額は現在400万円です。

結婚しており、妻Bとの間に10歳になる子どもCが一人います。

目立った財産はありませんが、
・私A名義の自動車(ローンなし。評価額30万円)
・私A名義の自宅(住宅ローン残1200万円、評価額1000万円)があります。住宅ローンについては抵当権が設定されています。

妻Bとの間で、借金の件で何度も話し合いましたが、私のだらしなさが原因で、離婚の申し出を受けました。

何とか妻Bとの関係を修復したいという気持ちがありますが、離婚となった場合は財産分与として自動車と自宅を譲渡できないかと思案しています。

自己破産をしたらどうなるか?

離婚せずに自動車と自宅の所有名義を妻に変更することができるか

自己破産の申立てを予定しているにもかからず、Aさんが自己所有の財産を妻のBさんに移転することは、財産の隠匿行為と評価されかねません。財産の隠匿行為にあたると評価される場合には、自己破産手続において免責不許可となる可能性があります。

また、妻のBさんに対する財産の移転は、債権者を害する行為にあたると考えられるため、裁判所に選任された破産管財人が、否認権の行使として、妻のBさんに財産の返還を請求することになると考えられます。

自宅がオーバーローン(物件の評価額が残債務よりも低いこと)となっているため、本来的な価値は0以下であるとして、妻のBさんに所有名義を変更しても他の債権者を害しないのではないかとも考えられますが、破産管財人が任意売却をすることが可能で売却代金の一部を配当へ回す財産にすることができるような場合には否認権行使の対象となるとする見解もあるところです。

なお、住宅ローン債権者は、自宅について抵当権を有しており、破産手続外で担保権を実行することが可能なため、妻のBさんは自宅の所有権を失う可能性があります。

離婚をして財産分与として財産を移転した場合はどうか

では、Aさんが妻のBさんと離婚をし、財産分与として自宅及び自動車を妻のBさんに譲渡した場合はどうでしょうか。

判例では、詐害行為取消の事案ですが、分与者が債務超過の場合であっても、民法768条3項(財産分与の規定)の趣旨に反して不当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認められる特段の事情がない限り、詐害行為として債権者による取消の対象とならないとされています。

本ケースの場合、AB夫婦が婚姻中に形成した財産としては自動車と自宅しかない場合には、A名義の財産については債務超過に陥っているわけですが、上記判例からすると、直ちに財産分与が否定されるわけではありません。

個人再生をしたらどうなるか?

個人再生手続においては、否認対象行為(上記のような債権者を害するかたちでの贈与等)があった場合、その評価額を清算価値に上乗せをすることになります。

その結果、最低弁済額よりも多くの返済をする必要が出てくる可能性があります。

個人再生においては、住宅ローンについて住宅資金特別条項をつけて再生計画をたてることにより、住宅を保持したまま債務整理を行うことが可能になります。

ただ、Aさんから妻のBさんへ自宅の名義を変更した場合には、住宅の所有者がAさんではなくなる結果、住宅資金特別条項をつけることができなくなります。

住宅ローン債権者が担保権の実行をすることにより、妻Bさんが自宅の所有権を失う可能性があることは破産の場合と同じです。

任意整理をしたらどうなるか?

任意整理においては、将来の利息を減らしたり、長期分割を組むことで月々の返済額を減らすことにより、債務の負担を減らすことができます。

任意整理の場合でも、債務超過に陥っている債務者が所有する財産を他に移転する行為は債権者を害する行為といえますので問題があります。

本ケースの場合では、Aさんの妻Bさんに対する自宅及び自動車の贈与が債権者を害する行為として取り消される可能性があります。

また、任意整理から破産や個人再生へ移行する場合は、Aさんの妻Bさんに対する財産の移転は否認対象行為として問題となりますので、どのような手続をとるかは慎重に検討したいところです。

借金返済で困ったら、弁護士に相談

妻や子どもへ財産を残したいと思うのは世の常であり、そのこと自体が責められるべきことではありません。

しかし、債務整理といった極限の状況においては、債権者に対する平等を意識し債務者として誠実に行動することが求められます。

問題が起こる前に弁護士にご相談ください。お気軽にご相談ください。

債務整理は事務所選びが一番大切!