債務整理中に交通事故に遭いました。今後、どうなりますか?
債務整理を考えているうちに、交通事故の被害が発生する・・・絶対にないとはいえませんし、実際にも債務整理中に交通事故の被害にあう事案は存在します。
加害者や保険会社から受け取る損害賠償金を債務の支払にあてなければならないのでしょうか
任意整理と交通事故
貸金業者等の金融機関からの借入れの場合、任意整理をすることによって、将来の利息を減らしたり、月々の返済額を減らしたりすることによって債務の負担を減らすことができます。
任意整理中に交通事故の被害者となった場合、加害者に対する損害賠償請求権が発生しますが、任意整理への影響はありません。
ただ、任意整理から自己破産に移行する場合は問題が生じる可能性がありますので、加害者や保険会社と交渉する前に一度弁護士に確認すべきです。
自己破産と交通事故
・破産手続き開始後に発生した交通事故の場合
破産手続開始後に交通事故が発生した場合には、 交通事故により発生した加害者に対する損害賠償請求権は、被害者である債務者の自由財産となりますので、債務者が保険会社または加害者に対し直接請求することができます。
・破産手続き開始前に発生した交通事故の場合
破産手続開始前に交通事故が発生した場合は、加害者に対する損害賠償請求権は、他の金銭債権と同じく破産手続において換価し債権者への配当に回すべき財産ということになります。
ただ、実務上は、以下のとおり、自由財産または自由財産拡張の対象にあたるとして、換価・配当の対象としない取扱いがなされています(例外あり)。
治療費については、任意保険会社の代払いによって医療機関に直接支払われることが多く、裁判所に選任された破産管財人がこれを換価・配当の対象にすることはほとんどないようです。
また、医療機関に直接支払われない場合でも、被害者の生存に不可欠なものとして自由財産または自由財産拡張の対象とされ、換価・配当の対象とならないようです。
慰謝料については、行使上の一身専属性があり自由財産にあたるとして、基本的には換価・配当の対象になりませんが、当事者間で合意が成立したり、終局判決が出るなどして金額が確定すると他の金銭債権と同じく換価・配当の対象になります。
ただ、慰謝料については、被害者の精神的損害を回復するものであり債務者の生活再建に必要不可欠といえますし、金額が確定しても一身専属性を失わないとの見解もあるところですので、全部を換価・配当の対象とするのではなく一部を換価・配当の対象とすることが多いようです。
自動車の修理費については、債務者の所有物の代償としての性格があり、基本的には、換価・配当の対象となります。
個人再生と交通事故
個人再生では、認可された再生計画に基づき免除を受けた再生債権を弁済することになりますが、再生計画による弁済率が破産における場合の配当率以上でなければならないとする清算価値保障原則があります。清算価値とは、債務者の資産の評価額のことです。
個人再生においては、法定自由財産以外の自由財産(自由財産拡張を含む。)は清算価値に含まれる扱いです。
自己破産の項で述べたとおり、加害者に対する損害賠償請求権は自己破産の場合に自由財産の拡張が見込まれる場合でも清算価値の対象となります。
ただ、慰謝料については、当事者間で合意が成立したり、終局判決が出るまでは、行使上の一身専属性があり自由財産にあたるため、清算価値の対象とはなりません。
交通事故についてのご相談も承ります
交通事故にあってしまった場合、損害賠償金や示談金で借金を返そうと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、手続によっては、交通事故で発生した損害賠償請求権を自身の生活資金として確保できる場合もあります。法律事務所にお気軽にご相談ください。