偏頗弁済

カードローンなどの借金をしている人の中には、家族や親せき、友達などからも借入をしている人がいます。

返済が難しくなった時に、これら個人の借金だけを返済すると、債務整理の手続きにおいて問題が生じることがあります。

偏頗(へんぱ)弁済とは

一部の債権者にだけ優先的に弁済すること

一人の債務者に対して複数の債権者がいる場合、一部の債権者にだけ偏って優先的に弁済することを、偏頗(へんぱ)弁済といいます。

一人の債務者に対して複数の債権者がいて支払いが危機状態にある場合、すべての債権者はその債権額に応じて平等・公平に扱われなければなりません。

これを債権者平等の原則といいます。

債務整理の各場面においては、債権者の平等を実現するため、偏頗弁済についてつぎのような取り扱いがなされます。

・自己破産では受け取った人がお金の返還などを求められることがある

よくあるのは、家族や友人からの借金だけ返したケース

破産者が、裁判所に自己破産の申立てをする前に、家族や友人からの借金だけ払ってしまっているというケースがしばしばあります。

この場合、返済の時期や受け取った人の認識など具体的な状況によっては、お金を受け取った家族や友人が破産管財人からそのお金を返すように求められることがあります。

「否認」ー 債権者平等の原則を徹底するための制度

偏頗弁済に対する否認(破産法162条)は、破産手続において、債権者平等の原則を徹底するために設けられた制度です。

破産手続が始まる前に破産者が有していた財産は、原則として、すべての債権者に対する返済資金(「破産財団」といいます)として公平に使われなければなりません。

破産管財人による否認権の行使で 債権者平等の原則を貫く

破産管財人が否認権を行使することによって、偏頗(へんぱ)弁済として一部の債権者に流出した財産を取り戻し、債権者平等の原則が守られる制度になっているのです。

借金返済が出来なくなった人が、せめて家族や友人にだけは迷惑をかけたくないと思うことは、人情としては理解できます。

しかし、受け取った家族や友人が、あとで破産管財人から返還を求める民事訴訟を起こされることもあり、良かれと思って返済したのにかえって大変な迷惑をかけてしまうことになりかねません。

・自己破産の場合、免責が認められないことがある

自己破産の最大の目的は、免責許可を得ることにあります。

しかし、偏頗弁済があると、具体的な状況によっては免責が不許可とされる可能性があります(破産法252条1項3号)。

免責不許可事由があっても、裁判所が一切の事情を考慮して免責を許可することができますが(同条2項)、その調査のために手続きに時間がかかったり、破産者本人の負担が増えることがあります。

・個人再生の場合、返済額が増える可能性がある

個人再生の場合、自己破産のように破産管財人が否認権を行使するという制度はありません。したがって、先ほどのケースで親族や友人の借金だけ返済しても、親族や友人が返還を求められることはありません。

しかし、偏頗弁済に充てたお金は、本来、すべての債権者が平等に分け合うべきものです。

そこで、個人再生においても、ほかの債権者が不利益に扱われることがないよう、偏頗弁済に充てた金額は、再生計画における返済額の計算で考慮される可能性があります。

(詳しくは、個人再生の、清算価値保障原則のところでご説明します。)

あまりにも高額な偏頗弁済を行うと、予想をはるかに超える返済が必要となり、個人再生の見通しが立たなくなる可能性もあります。

したがって、個人再生であっても、一部の債権者にだけ返済することは控えるべきでしょう。

・任意整理の場合たいていは問題ない

ただし破産や再生に切り替えるときは要注意

任意整理は、代理人弁護士が個別に債権者と交渉して遅延損害金や利息の減免、支払期限の伸長などの合意を成立させ、合意に基づいて債務を弁済する債務整理手続きです。

整理の対象とする債務を選択できることが任意整理の特徴の一つです。

たとえば、A社のローンだけを任意整理の対象とし、B社のローンはそのまま自分で返済を続けるという場合、整理対象となったA社に対する返済はいったん停止します。

この場合、B社に対する返済は、理屈のうえではやはり偏頗弁済に該当します。

しかし、任意整理の場合、整理対象となった会社(A社)との間で合意が成立し、合意どおり返済が順調にできている限り、偏頗弁済が問題となることは通常はありません。

問題となりうるのは、いったん任意整理の方針でA社の支払を停止しB社だけ支払を続けたものの、債権調査の結果やっぱり払いきれないので自己破産や個人再生に方針を切り替えたいという場合です。

この場合、B社に対する偏頗弁済がすでに発生してしまっているので、自己破産や個人再生の手続きにおいて、うえに述べた偏頗弁済として処理される可能性があります。

弁護士によく相談して方針を決めましょう

偏頗弁済は、お金を受け取った相手に思わぬ迷惑をかけることがありますし、ご自身の免責にも影響しかねないことですから、これから自己破産を考えているなら止めるべきです。

また、個人再生においても、返済総額に影響する可能性があるので慎重に判断するべきでしょう。

任意整理の場合、その後破産や個人再生に切り替える可能性があるかどうかという点を慎重に見極める必要があります。

法律事務所では、豊富な相談実績・解決実績に基づいて、ご相談者様のご事情や手続き全体を見通してアドバイスいたします。家族や友人からも借金があり、債務整理をお考えの方は、お気軽に法律事務所までご相談ください。

債務整理は事務所選びが一番大切!